競輪の結果をまとめるところ

レース番号レース種別 半周ラップ(一周ラップ) 1着決まり手 2着決まり手 3着決まり手 J選手着 H選手着 B選手着(上がり) 自分が使うときにまとめる。なんの責任もとりません。

【四場目】弥彦競輪場

 旅をしていて、「北国に来たな」と思う瞬間がある。私など移動はもっぱら鉄道だから、それは例えば新宿からの夜行列車でトンネルを抜け、架線についた新雪パンタグラフがスパークさせバチリバチリと雪深い山中が照らされる様だとか、谷筋を猛然と進む花輪線ディーゼル車の中で、吹雪の向こうにそびえる東北自動車道の無機質なコンクリートを見上げた時だとか。田沢湖線で乗り継ぎの時間が有り余っていたので、バスに飛び乗り山奥の露天風呂へ。風呂場は巨大な雪塊に囲まれており、雪崩れたらこりゃ死ぬなと思いつつ一人湯気に沈んだこともあった。そうそう、桐花賞当日となる大晦日水沢競馬場、飽和するまで凍結防止剤をぶち込んでいそうなドロドロの不良場場に、ゴーグル・防寒着をフル装備した騎手の見慣れぬ姿に驚きつつ、「お釣り300万円!」のおばちゃんから買ったモツ煮込みの沁みる暖かさ。これも、あの冬の競馬場でしか味わえないものだろう。

 これらはかけがえのない旅情である。しかし、旅行者として通り過ぎるだけならいいのだが、いざ生活するとなるとこれは厳しい。冬越しの苦労は現代文明の中では以前よりも遙かに楽になったには違いないが、千葉のような南国育ちの私からするとやはり生活の根底から違う。北国は大変である。だから、三国競艇を除く北国の公営競技場には冬休みがある。前述の岩手競馬は年越しまで粘るが、それ以外では早々に、寒さと雪で競馬や競輪をできる状態ではなくなる。

 日本唯一の村営公営競技場として知られる新潟県弥彦競輪場も、やはり冬場は休催してしまう。今年平成29年度のシーズン開幕は、4月の二週目の週末から。川崎競輪場で業界中が注視するナイター桜花賞が開催されている裏で、小雨の中に肌寒さが残る生憎の天気、ごくひっそりと幕を開けた。

 弥彦駅前から伸びる参道には、饅頭を蒸かす蒸気が目立つ。早朝ということもあるのか客の姿は見えないが、雰囲気の演出としては悪くない。誰かがやり始めると、みな真似をし出すものなのだろうか。もっとも、こんなにどの店も饅頭を蒸かしていて、売り捌けるものなのかという気もする。なんどか曲がりつつ歩いて行くと正面に弥彦神社の鳥居が現れるので、そこから右折し裏手へ抜けると弥彦競輪場である。入場料は無料なので、そのまま場内へ入ればよい。

 走路は直線が長めの400バンク、しかしスタンドは小さくなるほど村営の競輪場だという気がする。開門して間もなかったが、スタンドの入り口には20人ばかりがわいわいやりつつ行列していた。まだ寒いので、特別観覧席に入ろうというのだろう。「500円の方でいいかね」「いや、S席はコンセントがあるで」との声が耳に入る。特観は1000円のS席と500円席の二種類があり、どちらもソフトドリンク飲み放題付きである。旅先の携帯充電は死活問題であるから、私は1000円席に入ることにした。この入り口で「スポーツと競輪」という、なんとなく文化的な名の冊子型専門紙も購入できる。

 S席の構造は、ゴール前に横一列で座席が設けられている。ぞろぞろと、壮年から老年までの男女が席を埋めていく。「おぅ、来たかい」「レースをやるなら、上に入らないとな」「誰々はどうしたんだい」と、顔見知り同士の会話は賑やかである。ところが、肝心のコンセントは見あたらない。卓上には一人1台ずつ小型液晶モニターが置かれており、オッズや中継が見られるようになっている。この液晶のコンセントは手が届く位置にあることはあるが、まさかこれを引き抜くという話だったのか?……さすがに、そんなことをする度胸はない。まあ、それでもこのS席は快適だった。

 記念すべき開幕である1Rは二分戦だ。野口修平(神奈川・107期)が機動力では上手だが、こいつはあまり終いがよくない。だが番手の渋谷征広(静岡・91期)はいいにしても3番手の芦川大雄(静岡・87期)までは信頼できず、かといって福田直樹(埼玉・85期)が先頭の埼京から買うのもアホらしい。ひとまずここは見とする。果たして、野口が逃げる展開となったが、直線福田の後ろから小峰一貴(埼玉・64期)が捌いて伸び1着。2車単3,900円、三連単が10,420円と開幕からそこそこの配当となった。

 次の2Rは、山南光秀(群馬・98期)が圧倒的。その分オッズも被っており、ここも手を出したくない。なので、空いた時間で下のスタンドへ降りる。天気も天気だから、客はだいたい4コーナーあたりにある冷暖房付きのホールのようなところに集まっていた。その奥に、食堂がいくつか入っている。おでんのメニューを見てみると、これがべらぼうに安い。三角に切られたこんにゃくが3個で100円、あずま揚げなる小さな薩摩揚げやちくわが1個50円だという。出汁は甘めで、寒い中ではありがたい味だ。それをはふはふとやりながら、下のスタンドで2Rを観戦した。ジャンが鳴り、薮下直輝(北海道・95期)が後ろを見ながら先頭を進む。後ろは併走しながら動かない。しっかりひきつけて、薮下はホームからダッシュを踏んだ。あれよあれよと山南は不発に終わり、流れ込んでの3着まで。1・2着は薮下のライン後ろ2名で決まった。三連単の配当は65,220円、こいつは、まだまだ厳しい寒さが残っているな。

 3R、ここは長谷部翔(静岡・109期)と石渡英樹(千葉・71期)の南関2車で鉄板だろう。満を持して、長谷部→石渡の2倍に突っ込む。発走、ジャンでは樋口瑛土(東京・109期)が前に。長谷部が発進した。石渡が千切れた。なんてこったい……ホームで出切った長谷部の番手には樋口が収まり、石渡は4番手。こうなってはもうどうにもならず、場内の怨嗟の視線を浴びつつ回るだけだ。最後の直線で、樋口が長谷部を交わして1着。自力屋同士の決着はチャレンジだと売れるものだが、ここは長谷部→樋口の2車単が8倍に対して、裏目は4,830円もついた。特観の爺さんたちも、「こりゃ、今日は難しい」と不満げである。「今日は久々だからな、仕方がない」と愚痴られたが、選手は冬場も余所で走っていたし、皆様車券は場外としてお買いになっていましたよね。

 まあ、私だって外しているのだから人の悪口などいえやしない。残りのチャレンジも眺めてみたがパッと思いつかないので、再び食堂に降りて昼食にすることにした。ここの食堂は、入り口のレジでおばちゃんに口頭で食券を買い求めるシステムである。ラーメンやうどんから定食モノまで、ずらりとメニューが並んでいるが、さてどうするか。前のおっさんが、親子丼を注文した。親子丼は好きな方だ。なによりどこでもそれほど外れが無く、カレーほど胃に重くない。私も、親子丼ひとつくださいな。テーブルに座って、改めてメニューを見返してみると、親子丼の脇に「(豚コマ)」と書き足されているのが目に留まった。まさか新潟のこのあたりでは、それを親子丼と呼ぶ風習があるわけでもあるまい。驚いたが、おそらくはカレーなどと具材を共有する関係なのだろう。

 これはこれで美味しい豚玉子丼を食べながら、4Rの実況を聴く。今開催トップの得点を誇る菅田謙仁(宮城・109期)が一本被りの人気だが、気負っているのか木村成希(千葉・96期)とガリガリやり合っているようだ。それで菅田が消耗したところを、展開が向いた馬場喜泰(埼玉・76期)が捲りきって1着。菅田は垂れて着外に沈み、またしても6万車券である。続く5Rも、里見恒平(千葉・99期)の番手が千切れ、別線同士での決着となった。

 さて、チャレンジ戦が終わり、帰りの都合もあるので1・2班戦でやれるのは次の6Rだけとなる。人気は田原宥明(北海道・105期)が前を回る北日本勢だが、チャレンジ時は世話になったが1・2班戦では速さが足りない印象である。それよりは、とにかく叩けば主導権を取れるだろう角口聖也(千葉・94期)の3番手から、縦脚のある望月紀男(静岡・79期)の突っ込みに期待した。2車単は、一番安い北日本の番手小酒大司(福島・94期)とでも80倍からついている。今日の荒れ相場の流れに乗れるぞ。だいたい、この点数で加藤剛(神奈川・68期)が番手というのも、なにやら作戦の匂いがするじゃないか。

 赤板ホームから、南関勢が田原を閉じ込めつつ前前へ。ジャンで誘導を切って先頭に出る。後ろを見つつ、3角から角口が発進。よし、予想通りの展開だ。と、体勢を立て直した田原が捲りに出た。速い。加藤は番手捲りを打たず、申し訳程度のブロックで田原を素通し。こうなるやすかさず望月が発進するも、すでに北日本勢が勝負を決めていた。ここに来て、2車単・三連単ともに1番人気での決着である。

 競輪場を出て、駅へと歩く。やはり、参道の人通りはまばらであり、朝はあれだけあった饅頭蒸しの蒸気も消えていた。小雨の方も変わりなく、冬が明けたばかりの弥彦はまだ寒い。次は、暖かい季節にもう一度来てみようと決めた。

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「春先でバンクはまだ重い」終わってみればさすがである(2017.4.9)

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新津駅にて。弥彦線には鳥居マークがつく(2017.4.9)。

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弥彦神社越後国一宮のすぐ裏手に賭場が常設というのも凄い話である(2017.4.9)。

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(2017.4.9)

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(2017.4.9)

智彦親王牌開催を受け、いろいろとリニューアル(2021.6.12)

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電子レンジサービス(2021.6.13)

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味の染みたこんにゃくが美しい(2017.4.9)

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親子丼という名の他人丼(2017.4.9) 

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競輪場の裏手にある宝公院(2021.6.13)

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宝光院の横、競輪場入場口のすぐ前にある場外食堂。場内で酒が出ないのであるタイプ。にぎわっていた。(2021.6.12)

長岡駅近の変な店その1:中華大吉。深夜11時から翌朝まで営業、かつ開店中もシャッターを下ろし続けている謎の店。(2021.7.24)

(2021.7.24)

盛りがいい餃子。近隣のスナックなんかから、出前の電話がよく来ていた(2021.7.24)

長岡駅近の変な店その1:中華料理 おがわ。普通の老舗中華食堂なのだが、なんか「全身の血液がとてもきれいになる野菜スープ」を作っているという、なんかあれな感じの張り紙がある。「今回のコロナにもきっと効く」とか(2021.6.12)

すんばらしい野菜スープによる中国そば。さっぱり塩味。(2021.6.12)