競輪の結果をまとめるところ

レース番号レース種別 半周ラップ(一周ラップ) 1着決まり手 2着決まり手 3着決まり手 J選手着 H選手着 B選手着(上がり) 自分が使うときにまとめる。なんの責任もとりません。

【十三場目】小田原競輪場

 今年の冬は暖かい。風が強いと憂鬱な夜の外仕事も、この気温ではなんてこともない。こうなると、新型ウィルスとやらがいよいよ猖獗を極める前、動きやすいうちに少し遠出などしてみようか。ちょうど珍しいことに、隣り合う小田原競輪場伊東温泉競輪場が、同日程で開催している。伊東の方はナイターだから、ハシゴにはうってつけ。そのまま伊東周辺で一泊し、また小田原へ戻って打つか、はて伊豆をぶらつくか。

 

 東京から小田原駅へ向かうには、小田急――この社名が小田原に由来しているのは、言われればそうだが初見ではなかなか――とJRの二路線がある。小田急を使った方が片道500円ほど安いのだが、時間は30分ほど余計にかかる。わたしなどは東京の東側に住んでいるので、無精して東京駅から東海道線に乗り込んでしまった。けれども、小田急の1日乗車券は2,000円と安いから、途中下車でも遊びたいならこちらだろう。

 東京のベッドタウン圏内であり、かつ箱根観光の拠点でもある小田原の駅は立派だ。競輪場へは、駅前のロータリーからマイクロバスの送迎が出ている。だけれど、歩いても10分少々の距離である。道すがら右手の坂上には、城跡に築かれた県立小田原高校が、また競輪場の先には相洋高校――こちらは、競輪場のバンク内からも校舎が見える――があるため、途中は中高生の集団がかしましい。おっさんと爺さまばかり、灰色の競輪制服を着て賭場に向かうところ、夢と希望と過信に溢れたティーンたちの目に入るのは、ちと後ろめたさがある。だがな、ああはなりたくねぇなぁってダメな大人だって、それでも生きているってのをね、見せつけるのも地域社会の教育ってやつだ。胸を張ってぐいぐい歩こう。……かといって、PTAからいわれなき文句が出て、存廃について背後からの匕首一刺しにならないよう気遣いたい。

 第1競走が10時35分発走の、この日の開門は10時きっかり。小田原は入場門脇の外向き売り場で早朝発売をやるから、20~30人ばかしが溜まり開門を待っていた。特観席は1,000円だが、今回は途中で伊東へ向かうこともあり止しておく。なお、ここの特観席売り場は、正面のガラス面がそのまま特観席の見取り図になっている。座席に対応したポケットに指定席券代わりの札が刺さり、座席が売れると下の「売切」が見える、という仕掛け。このアナログの機能美には一見の価値がある。

 さて、ヒラ開催の2日目、今節は1・2班戦も含めオール7車建てのローコスト開催だ。1レース目はチャレンジ一般戦、競走得点抜けた吉松賢二(A級3班、群馬90期)からが支持を集めるが、自力での終いには疑問が残る。かといって別線の古川喬(A級3班、福島99期)も地力不安で、ならば切れ目から脚を使える得点上位柳澤達也(A級3班、兵庫72期)の突き抜けに妙味ありと見た。

 競走始まり、柳澤は道中Sを取った吉松ラインの3番手を追走。ジャンから古川が駆けたところ、吉松は古川の番手に飛びついた。古川の番手だった山崎明寛(A級3班、千葉81期)は浮かされてしまい、2コーナーあたりまで外並走で粘るもそれだけ、殴り返す力はなし。柳澤は脚を温存し、4番手で最終バックを通過。吉松が番手から古川を捲りにかかるところ、柳澤は内を突いて伸びる。最後はきっちり中を割った!届いたか?小田原はバング内にビジョンがないので、スロープレイを観に小走りで裏のモニターへ……二車単の配当は3,240円、ここは厚めに張っていたから、懐にだいぶ余裕ができた。

 2レースは見したが、駒井大輔(A級3班、東京98期)の逃げ切りで決着。大井崇(A級3班、茨城73期)あたりもそうだが、先行をやるおっさん選手というのはもうそれだけで声援が飛ぶ。3レースからは準決勝、前節の別府といい、上村常文(A級3班、熊本59期)の動きがよい。力が違う阪本和也(A級3班、熊本115期)が先頭の九州ライン3番手からの順番狂いがあるのでは、とボックスで狙うも、番手回りの富永昌久(A級3班、佐賀88期)がついていけず。上村はそれでも良い脚で追い上げたが3着まで。まあ、これは狙いが過ぎたところだろう。

 11時半を過ぎ、ここいらで早めの食事を。小田原競輪場のうれしいところは、今では関東・南関東地区で随一といってよい食堂群である。店数も多く、どこで何を食べても大外れはないのだが、酒を飲むなら1・2コーナー裏の1号・2号売店がよい。こちらは、穴場を閉めた通路スペースに机を並べ、席数も多い。1号売店は、炭焼きの串物が自慢。2号売店は餃子を筆頭に中華からフライ類まで豊富なラインナップを網羅している。店を切り盛りする女性陣の接客もこなれており、1号売店のお母さまなど常連さんにしばしばマークカードを託しては

「全然ダメ、もう競輪なんて儲からんね」

なんて愚痴を会話のつまみに提供している。

 この日は、1号売店でお通しの風呂吹きこんにゃく、モツ煮1椀、串焼き4本で瓶ビール1本、チューハイ2杯。モモ串は山椒粉の香りがうれしく、豚カシラ串をよくみると、串の根元に茶色い粉が残っている。味わいからいっても、これは臭み消しにシナモンかなにかを使っているようだ。競輪場の食堂では出色の、すばらしい仕事をされている。これで1本100円也、食べすぎたくらいのこの日も2,000円を切ったのは、こちらが申し訳ないくらいである。

 すっかり酔っぱらって、1レースに間に合うよう伊東へ向かう。途中温泉で酔いを醒まして気合を入れたが、相変わらず伊東温泉競輪場の客足は寂しい。裏でやっていた小倉・濱田カップが終わると、人影はさらにまばらになった。車券の方もいまいち手を出しにくく、早々に切り上げて徒歩10分の伊豆急南伊東駅へ。そのまま南下し、今年は早くも満開の河津桜で川沿い夜桜をやるなどして遊んだ。それでも少し未練があり、こそこそスマホで伊東を弄ってみたが、冴えない。

 スーパーの惣菜コーナーでいわしハンバーグにさつま揚げ――別に地元製ではなかろうが、ザツな一人旅はそれでよいのだ――、それに酒を調達してから、宿へ入る。六畳一間のテレビに電源を入れると、地元のコミュニティ・テレビ局がついた。そのままにしていると、伊東温泉競輪のダイジェスト番組が流れ始める。なぜだか「カウボーイビバップ」のオープニングをBGMに映る、この日の配当は本命固め。いったい、この伊豆で何人がこの放送を見ていたんだろう。そんな大人向け番組が終わると、お次は夜も10時過ぎというに、「こどもたちに夢あるお話をお届けする」絵本の朗読番組だ。

 朗読とはいうけれど、テレビなので絵の方もいっしょに映っている。絵本の中ではお姫様が大冒険をしているが、明日はどうやら雨らしい。わたしの方は、伊豆を当てなくふらつくよりも、また小田原で呑んだくれることになりそうである。

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特観席発売所(2017.6.24)

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(2018.1.14)

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外向き発売所に残る枠番連勝単複時代の説明文(2020.2.15)

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(2017.6.24)

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正面に見えるのが私立相洋高校の校舎(2017.6.24)

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特観席より。特観席の湯茶接待はおばちゃんが人力でホワイトウォーターやコーヒー(甘くない)を入れてくれる(2018.1.14)

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左手のガイダンスコーナーは、配布物等充実しておりがんばっている(2017.6.24)

f:id:glay222:20200223191558j:plainガイダンスあたりから入場門側を振り返ると、小田原城天守閣が見える(2017.6.24)

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無料湯茶接待は充実のオレンジ・コーヒー(どっちも甘い)(2017.6.24)

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食堂街(2020.2.15)

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二号売店のメニュー(2019.2.15)

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小田原は練り物が美味い(2019.2.15)

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一号売店の煮込みは、七輪に載せた鍋から掬う(2019.2.15)

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(2019.2.15)

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(2020.2.15)

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(2020.2.15)

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(2020.2.16)

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オレンジの看板がおしゃれな「フードたかはら」の煮込みは濃い味。こちら含め、小田原の飲食店は元選手経営が多い(2020.2.16)

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二号売店の餃子は看板にふさわしい味(2020.2.16)

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大国相のラーメン(2020.2.16)