競輪の結果をまとめるところ

レース番号レース種別 半周ラップ(一周ラップ) 1着決まり手 2着決まり手 3着決まり手 J選手着 H選手着 B選手着(上がり) 自分が使うときにまとめる。なんの責任もとりません。

【十七、十八場目】松山競輪場、別府競輪場

 天気が悪いし、ご時世柄あまり出歩くわけにも行かず。だらだらと布団で本など読んで過ごしていた休みの午後。ほぼ一ヶ月ぶりに、玄関の呼び鈴が鳴った。はて、amazon定期便の発送連絡を見落としていたかな、と不思議に思いながらドアを開けると、郵便屋さんが立っている。

「現金書留、1万円です」

まったくおもいあたるフシがない。つい、何事かと聞き返してしまう。命の次に大事なゼニをわざわざ赤の他人に運んできてやったのに、詐欺か強請りかと視線を投げられた郵便局員氏、困る。

「住所、名前、お間違いないですよね?」

なるほど、たしかに私だ。よくよく封筒を見てみると、表に「netkeirin」の文字が。競馬データベースサイトの老舗netkeiba.comが、先日姉妹サイトのnetkeirinをオープンした。netkeibaはデータの取り扱いで他を圧倒している大手だから、そのオープン記念アンケートにも参加しあれこれ書いた記憶がある。だが、どうせ当たりはしないだろうと、懸賞部分はろくに見ちゃいなかった。

曰く、「競輪を楽しむ軍資金」キャンペーン。現金壱万円也。

 郵便屋さんに謝って、部屋に戻り封筒を開ける。軍資金キャンペーンなのだから、DERUCAだとか、あの手のチャージ用電子マネーで配布すればよさそうなものだが。中からは、どこででもなんにでも使えるピン札が、Ⅰ枚ペロリと顔を出した。

 令和3年1月末、寄せては引く波のようなCOVID-19流行の最中だが、昨年に栃木の山側へと転勤になったため、地元の緊急事態宣言はそろそろ解除される見込み。いい加減、家に引きこもっているのも飽きてきた。感染の状況次第ではあるが、せっかく降ってきた軍資金を、ちと気張って使い込んでみようか。

 

 2月半ばの金曜日、仕事を済ませ、地元の駅から東北本線上りに乗り込む。宇都宮でいったん乗り換えるが、すでに高校生は一通りいなくなった時間である。出張族が増える新幹線よりも、そのまま鈍行列車で東京駅へ向かう。

 途中、ガラガラの車内のボックス席で、おっさんがコンビニのビニール袋で晩酌をしている。その後ろに座っていた兄ちゃんが、ゴホリと咳き込んだ。おっさんの、怪しい呂律が絡みだす。

「おい、咳すんなら電車乗るんじゃねぇよ!」

「あ?おっさんこそ、マスクしろや酒飲んでんじゃねぇよ」

「咳すんじゃねえっつってんだろ!お前コロナだろ!」

えんやえんやとやったあと、ケリつけようやとそこだけなんとも合点して、古河駅で二人して降りていった。こちらが栃木の山奥に引きこもっているうちに、平地はずいぶんと荒んでしまったのだろうか。ああいうのは、前世紀までの競輪場でやるべきことである。お世間の表と裏が入れ替わってしまうようでは、もう能天気に、競輪など打ちに行っている場合ではないのかもしれない。

 21時過ぎ、東京駅につく。次に乗るのは、22時ちょうど発の寝台特急サンライズ瀬戸だ。このとてもたのしい列車の中で、なにも飲み食いしないのではもったいない。八重洲地下街に向かったが、緊急事態宣言中のこと、ほぼすべての店が20時半だかで店じまいだった。仕方がなしに、コンビニでワインとチーズを手に入れ、それからマクドナルドでチキンナゲットの大箱を買った。サンライズは定刻通りの発車、意外にも、いままで乗車した中では一番乗車率が高いように思えた。

 しかし、30代になると、あまりジャンクなのをモリモリやらなくなったな。さらに加齢が進めば、旅打ち・旅行の類いも億劫になるものなのだろうか。心地よい寝台列車の揺れの中、ワインをボトル半分と少し開けたところで、ナゲットがなくなったのまでは覚えている。

 

 5時半ごろ、姫路を過ぎたあたりで目が覚めた。そこから一時間ほどで岡山駅着。ここで、いままでいっしょに走ってきたサンライズ出雲とお別れとなる。切り離し作業で停車時間も長いから、飲食物を買い求めにホームに一度出る客も多い。こちらはというと、昨晩のナゲットの粉っぽい鶏肉が、胸に沈んで塞いでいる。

 朝日を浴びながら瀬戸大橋を渡る。終点の高松までは向かわず、今回は四国に上陸してすぐ、坂出駅で降りると、松山行きの特急列車に乗り換えた。予讃線のこの区間は、瀬戸内海沿いを駆け抜ける車窓がすばらしい。だが、競輪場があった観音寺、ボートレース場の元気がいい丸亀はともかく、愛媛県内に競艇場がないのは不思議である。新居浜今治などは古くからの鉱工業都市だし、その規模からいっても賭博の需要は十分にあったはずなのだが。10時過ぎには、松山駅へとたどり着いた。

 競輪はナイター開催なので、まだ随分と時間がある。松山駅前の路面電車乗り場から、濃いみかん色の列車に乗って、終点の道後温泉まで向かう。前回訪れた際は、アーケードの通りが人で溢れて歩きにくいほど、そこにインバウンド向けの土産物屋がじつに景気よく、客を呼び込んでいたものだった。それが今は、日本人のカップルがぽつぽつ地味に歩くばかり。閉めている店も目につき、この一年間の打撃は相当なものだったのだろう。そして、いつまでこの状態が続くのか考えると、ぞっとする。

 以前は行列ができており、「なんで風呂に入るのに、時間待ちしたあげく芋洗いみたいにならなきゃいかん」と酸っぱく諦めた道後温泉本館のたいそう立派な建物も、今ではスタッフが所在なさげに暇をして、検温に訪れる客を待ちわびている。一風呂いただくことにしたが、温泉自体はよくあるアルカリ性単純泉で高めの温度、あまり長湯はできなかった。

 

 道後温泉は食い物屋が少ない。「鯛めし」を名物として幟を出している店があるが、あれは宇和島のものだろう。だいたい、日本中どこでもこういう観光地のど真ん中で食べると感心しないことがほとんどだから、「名物にうまいものなし」などと言われてしまう。きちんと仕立てられた鯛めしなら3,000円5,000円出しても惜しくはないが、たんに形だけ真似ましたというものに、2,000円を出す気にはならない。それに、鯛の刺身が食べたいだけならば、まともな料理屋でも1,500円を超えることは滅多にない。

 一部で有名な風俗ビルの外観を巡礼したあと、路面電車松山市駅へと向かう。JRの松山駅も決して馬鹿にしたもんじゃないが、伊予鉄の中心駅である松山市駅にはなんと高島屋が入っている。その地下の飲食店街もなかなかの賑やかさだが、この日は駅前の定食屋に決めた。駅前の食堂というと、昔の人にはやはり立地だけで中身は、という声もある。だが、平成を経て現代まで生き残っている、地方都市のそれは侮れない。ここも、780円の日替わり定食で、小ガレイの唐揚げ、豆アジの南蛮漬け、イカを煮たのに肉じゃがまでついてきた。南蛮漬けの浸かりぐあいは上々、イカもふんわりと柔らかく煮あげてある。四国らしいアゴダシの味噌汁、唐揚げに添えられたスダチの香りも嬉しくて、ご飯のおかわりをもらってしまった。

 

 食べ過ぎた分を、松山城の城山に登って帳尻をあわせてから、松山駅に戻る。松山競輪場の最寄りとなる、市坪駅までは一駅である。高架になっている駅から降りれば、すぐ目の前にはプロ野球の公式戦も行われる「坊っちゃんスタジアム」がある。この日は、社会人野球のチームが、キャンプを張っていたようだ。そのまま運動公園内を奥へ奥へと進むと、競輪場が見えてくる。

 松山競輪場の建物は、2000年代に入ってから改築されたもの。まだまだキレイでコンパクトだ。印象としては、宇都宮あたりが近いかもしれない。ホーム前の野外席の他に、バンクを取り囲むスロープ部分も前面がガラス張りで、観戦が可能になっている。客入りはまあそこそこだが、大学生くらいのグループがいたのは嬉しい。

 この日はガールズ込みのFⅡナイター開催初日。横綴じが珍しい専門紙「金星」を買い求める。飛び込み一発目の第1競走は、7車だての二分戦である。ラインの先頭を走るふたりのうち、高田隼人(A級3班、千葉88期)はバック本数5に対して逃げと捲くりの2着が1回づつ、それにイン粘りや流れ込みによるものと考えられるマークが2回ついている。39歳という年齢からいっても、自力屋としては脆いことを、きちんと自覚し立ち回っている選手だ。対する田村英輝(A級3班、栃木67期)はバックを10本持っているが、逃げの1着が3回にマクリの2着が1回。6・7着が並んでいる初日の戦績からみても、格下相手に逃げが決まった時以外は用なしか。

 高田、田村ともにホーム回数がバック回数より大幅に少ない点も、航続距離に難があるタイプであることを示している。点数が4点違う高田としては、田村を先に行かせておいて、残れるタイミングから捲りにいく展開にしたいところ。番手の奥山雅士(A級3班、静岡65期)が差して二車単5-2、これは1番人気で4倍弱。裏で高田のアタマも5倍を切っており、それならば松山の長い直線のこと、3番手の井上達雄(A級3班、東京68期)まで抜け出した5-3で14倍を狙おう。一番最初なので慎重に、500円。

 それに、田村が掛かった展開ならば、田村ラインの三番手から地元の大森績(A級3班、愛媛59期)の突っ込み。初日予選の戦績は振るわないが、捲りの1着が1回、そして差しの2着が1回。3着までなら面白いと見て、5〜7倍つく奥山との4-5ワイドを300円。

 ところで、この公式の決まり手分類による差し2着というのは、扱いがおもしろいデータである。というのも、ライン三番手から先頭垂れて番手と決着の2着だと、これはマーク扱いとなる。差しの2着とは、ラインと無関係に追い込んで2着、縦脚を繰り出したことを示す指標なのである。なお、差しの1着にも、直線一気の1着が含まれているが、これは一見して切り出し困難なので使いづらい。ラインからの差し切りとは性質が異なるので、本来は別途「追い込み」とでも記録していただきたい。

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 競走は、高田が前受、それに赤板バックから田村が進出し、高田はいったん下げて4番手。さて、高田はどこからいくか、ジャンが鳴って緩く流していた田村に、高田は3角半ばでインから再度進出。これは番手狙いではなく、行きがけに田村ラインを分断すると、そのまま最終ホームを自分で駆けた。田村の後ろの尾崎勝弘(A級3班、徳島66期)が必死に4番手を追走するが、体勢は高田ラインに絞られる。穴を期待した大森はというと、ライン分解時の立ち回りが悪く、浮いた6番手でモゴモゴしている。

 このタイミングなら、あとは高田が垂れるかどうか。直線、差せええと祈ったが、入れ替わったのは奥山まで。軍資金ー800円、残9,200円。

 

 続く第2競走は、清水健次(A級3班、東京113期)が抜けている。しかし相手が絞りにくく、オッズ的にも別線が満遍なく売れている。逆張りでライン通りに買うには番手の一倉(孝良、A級3班、東京77期)は信頼できず、見とする。実際、競走結果は清水がアタマ、筋違いの相手が来たのに二車単は一番人気、430円である。

 第3競走、ここは2・2・3の三分戦、72点持っている細田純平(A級3班、広島99期)が中心。ホーム回数8回バック回数3回と仕掛けるだけは仕掛ける木村成希(A級3班、千葉96期)と、格落ちが否めない佐川拓也(A級3班、福島99期)が相手、細田としては木村を逃して中段から捲るのが最良か。タイプ的に、細田が後ろに置かれての佐川ペース駆け逃げ切りは考慮に入れなければならないが、それでも番手の大崎(世志人、A級3班、高知76期)との表裏、どちらも3倍前後ならば買えるレースだ。

 大崎の直近決まり手は差し2着1回マーク3回。細田は逃げの決まり手こそ連帯4回中2着4回と差し込まれているが、捲りは1着決まり手2回を持っている。細田が差されない一点勝負とし、二車単7-1に3,000円。

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 赤板ホーム、木村が誘導を切ったところで、後ろに構えていた細田が前へ。ジャンを取ってペースそこそこで後ろを伺ったが、別線は中段の取り合いで、どちらも仕掛けてこない。9車ならともかく紛れにくい7車、しかも前は格上のライン。脚が劣る格下がそこを取り合うのは、1着を狙うという意味では褒められたものではない。だが、競輪はメシも喰えば扶養家族だっているかも知れない、人間がやるものだ。選手としては、4着で準決勝に勝ち上がらないと稼ぎも点数も段違い。下手に殴り込んで大敗するよりも、ここは流れ込みを狙っていく、ということになる。

 細田は徐々にペースを上げていき、そのまま二角から踏んで逃げる展開となった。ベストとは違ったが、別線の戦意喪失で好きに仕掛けられたし、番手の大崎もちゃんとついている。そのまま直線まで流れ込んで、大崎は迫るも一車輪まで。きれいな筋の人気決着だが、旅打ち初日に的中を拾えたのはよいことだ。軍資金+5,700円、残14,900円。

 

 さて、ざっと新聞を見たところ、残るチャレンジ戦ふたつは面白くなさそう。間に挟まるガールズは基本的にやらない。1・2班戦はというと、新型コロナにより追加・補充斡旋が停止された影響で、初日から5車だて6車だてというありさま。数が少なければその分絞って買えばよいのだが、初日ということもあり、遅くまで残ろうというやる気に欠けた。旅打ちとしても、まだ先は長いので無駄打ちするわけにいかない。名残惜しさもあったが、日がちょっと落ちたくらいで、競輪場を後にする。

 松山駅に戻り、駅前のホテルに荷物を置く。近くの居酒屋で、中瓶1本だけビールを飲んだ。カウンター越し、常連と釣りの話に華を咲かせる店主による、鯛の刺身はさすがだった。

 

 翌朝、6時17分発の伊予大須行きの鈍行列車に乗りこむ。松山から宇和島方面へ向かう鉄路は、旧来の伊予灘沿岸を走るルートのほかに、昭和末期になって全通した内陸を通る内子線がある。今回は後者を通る列車だが、さすが新設された路線だけあって、線形がよいのだろう。鈍行列車でも、ドンドン飛ばして進んでいく。

 7時47分、伊予大洲駅着。なにやら鵜飼なども残る雅な街らしいか、今回は縁がない。すぐに、4分後に発車する宇和島行き鈍行に乗り換える。放送で案内されたホームへ向かうと、停まっているのは特急列車で使われる車両だ。間違えたかな、とよく見ると、昇降口に「普通」と札がかけてある。JR四国は経営が厳しいから、こういう車両のやりくりもあるのだな。

 立派なリクライニングに座らせてもらって、8時10分ごろ、八幡浜駅に着く。鉄道での移動はいったんここでおしまいである。港へ向かって、20分ほどまっすぐ歩く。でかいトラックが通る国道を進んでいくと、巨大な岩壁のような佐田岬半島を臨む、フェリーターミナルが見えてくる。

 別府行きのフェリーの出港は10時15分、二時間近く時間がある。港には道の駅が併設されており、水産物の直売市場があった。中に入ってみると、これが思わぬ盛況である。中央の通路の両側に、ずらりと十数件の魚屋が並ぶ。取り扱われているのは、当然地元の八幡浜港水揚げが中心。「半分にできます」と札の乗った1本ママのブリなどあったが、半身だってたいへんなものだ。それにタイだの、タチウオだのから、モンゴウイカクルマエビ、練り物には最高のハモやエソのすり身まで。それでいて、どれもたいへんにお安い。地元の客で賑わうのも当然だろう。

 今日中に帰宅するのであれば、いろいろ買い求めたいところだったが、仕方がない。寿司も美味そうだったけれど、宇和島産のブリ刺し身を1パックもらった。分厚いのが8切れ入って500円、フェリーターミナルのベンチでいただいたが、とにかく脂がすさまじい。臭みは一切なく美味いが、そのままでは舌が馬鹿になってもったいない。口直し用に、ペットボトルのお茶を買った。

 

 フェリーが出港してしまうと、とくにやることはない。進行方向右手の佐田岬半島に、巨大な風力発電の風車が回っている風景が珍しいくらい。船内も空いているので、コンセントで充電を確保し、うとうと横になる。ほかの客も、だいたい同じようにしているようだ。午後1時過ぎ、別府港に上陸した。

 バスは使わず、港からそのまま別府競輪場方面へ歩く。その途中で、事前に目星をつけていた外湯にお邪魔することにする。無人の入り口でお金をいれ、中にはいるとまずは脱衣所。そこから戸も何もなく続く階段を数段降りたところがタイル張りの洗い場で、その真中に直径1mばかりの円形の湯船が張ってある。脱衣所と洗い場がシームレスなこのつくりは、別府では市営や自治会営の湯でも、たまに見かける構造である。

 先客は、地元の方だろう老人2名。だが、二人とも湯船には入らず、石鹸で身体を磨くと湯を汲み出して浴び、その場で少し腹ばい・横ばいになっては、またお湯をかぶる。それが15分ばかり続いた。湯船もずいぶん小さいし、もしかしたら、ここは身体を清めるだけで、湯船には入らないしきたりなのだろうか。作法がわからず、声をかけて聞くのも気後れして、自分も湯船に入れない。身体を洗い、またさらに念入りに、事細かくやって様子を伺う。いよいよ、垢を落とすところがなくなってきた。

 すると、お二人がほぼ同時に、湯船に足をかけ、すいと身を沈めたではないか。

「やっぱぁ、この時間のお湯が一番いいな」

「違いね」

それだけ話すと、すぐに風呂からあがってしまった。着替えた二人がいなくなり、私もふたりに倣って、一寸だけ湯船をひっかけた。

 

 別府競輪場も、直近で建て替えられたきれいな競輪場である。また、伊東の競輪場の正式名称は「伊東温泉競輪」だが、温泉地として負けられない別府競輪の駐車場には「競輪温泉」なる外湯がある。お湯自体は別府ではなんてことのないものなのだが、あの小さめの湯船に入っている全員が競輪の客だと思うと、おかしみがあって話の種には面白い。脱衣所に鍵付きロッカーがないので、盗難だけは気をつけなければならないが。

 一方で、別府と競輪といえば、今から5年ほど前のこと。別府市が長年、生活保護受給者に対しパチンコ店と競輪場へ入場していないか調査し、悪質な場合は保護費の減額まで実施していたことが報じられた。当時購読していた『新潮45』ーーかの差別問題で廃刊となってしまったーーにもその記事が載り、競輪場の食堂従業員から「保護費支給日になるとやってきて豪遊するお客さんがいる。真面目に働いているのが馬鹿らしくなる」なるコメントまでとっていたのが強く印象に残っている。

 当時の記事を思い返すと、温泉街の板場で働く職人衆は、腕一本で各地を渡り歩く根無し草も多い。中居や清掃の仕事は、昭和のころは「訳あり」の女性でも働くことが出来る職場だった。だが、そうした生活に慣れてしまうと貯蓄が進まず、また雇用者側も老後の保証などの面では不熱心さがあったらしい。それで働けなくなれば、生活保護を受給するのは当然の権利である。一方で、別府市生活保護受給率の高さが問題になり……という話だとか。負けがこんで生活再建に支障があるのならともかく、受給日だとかごくたまに、倹しく遊んでいる分にはいいじゃないか。だいたい競輪は市営なんだしさぁ……だが、競輪の主催は別府市でも観光経済部事業課所管。福祉系の部署との仲間意識は、あまりないものなのかもしれない。

 

 さて、裏でやっている川崎・全日本選抜競輪も眺めつつ、地元の専門紙「競輪ダービー」を買い求める。開いてみると、ダービーは昨日の松山「金星」と異なり、連帯決まり手の1着・2着が別れていないタイプ。バック・ホーム回数も、バック回数が「先行」とあるだけだ。

 ここ1・2年でアオケイ・アカケイの関東大手二社が急速に各地の新聞を統合し、紙面も両社のシステムで作成されるようになってきた。「中部競輪」や関西の「競輪研究」も悪くない。「金星」のように、地方にありながら充実した情報を提供している新聞社もある。それでもまだ、この程度の情報提供しかない専門紙も依然として残っている。決まり手別の連帯数だけなら、無料の出走表でだってわかる。着順しかない過去9場所の戦績で、500円を取ろうというのはなかなか厳しい。

 ただ、悪いところだけをあげつらうのもなんだから、ダービーや「コンドル」のような九州系新聞社の良い文化もあげておこう。コメント欄の充実は素晴らしい。たんにラインを示すための「自力自在」「○○へ」と簡素化されたものではなく、格段に詳しく載っている。人間味がわかるエピソードが多いのがおもしろい。今回も、ある選手が糖質制限で20kg痩せた、というコメントがあり、つい野次りそうになってしまった。

 

 第1競走、先行回数では松本一成(A級3班、新潟77期)が中心だが、それにしてもバックは8回。差しやマークの決まり手もある自在型の選手だけに、自分でペースを作るかは微妙。それならば、降班前の1・2班戦でも結果を出している、原司(A級3班、広島97期)の縦脚が面白い。原から番手の宮原英司(A級3班、長崎71期)のスジで15倍が1,000円、単騎で立ち回る兵動(秀治、A級3班、広島97期)も相手に一考。この二車単は30倍つくので、配当を合わせて500円。それに、原・松本を軸にして、宮原、兵藤への三連複を500円ずつ流して抑えとした。 

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 バックは流して松本が取り、原は中段。松本は後ろを振り返り仕掛けどころを伺っていたが、7番手追走していた兵動が、3角で外から発進。イン切り含みで原も出たが、兵動のかかりがよくいったん出切りそうだ。すると、原は松本の番手を切り取って確保、最終1角で前から兵動、松本、原の順で納まった。

 最終バックを過ぎて、松本が番手捲りにかかる。こうなると、宮原には原についていってもらわなければ。だが、外から捲ってきた烏丸(晃順、A級3班、岡山89期)が並びかけ、直線宮原を交わして3着。原は松本を危なげなく差して1着なので、狙いは悪くなかったが……軍資金−2,500円、残12,400円。

 

 第2競走、第3競走は見とし、第4競走。先行するのは大平龍太郎(A級3班、愛媛117期)だが、残り目は薄い気がする。ならば番手の赤松誠一(A級3班、高知61期)が有力だが、このラインの3番手を固める海地成仁(A級3班、高知80期)は点数65点台、ここは離れが濃厚。であれば、3番手をなんなく確保できる平川雅晃(A級3班、長野107期)に展開が向くか。赤松との二車単折返しは平川アタマで4.5倍、赤松アタマで10倍弱。この裏表に1,000円ずつ入れることにする。

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 だが、蓋を開けてみれば先行したのは平川の方。バック前には大平に悠々捲られ、3番手の海地まですんなり。赤松→大平→海地のライン独占3連単は、3,580円もついた。軍資金−2,000円、残10,200円。

 

 チャレンジ戦のラスト、第5競走。ここはどうやったって、76点も持っている佐々木和紀(A級3班、神奈川117期)が絡んでくる。だが、番手の河合康晴(A級3班、静岡68期)は近況不調で、千切れる目は十分ある。

 となると、普通ならば相手を絞りに行くところだが、あまり思い浮かばない。では見するかというと、今日もこのあと買うレースがなさそうで、いま軍資金はちょうどトントン。少し、勝負をかけてみたい。

 そして選んだのが、佐々木アタマの3連単フォーメーション、二着は河合以外全部、三着は河合含めた総流し。普段はあんなに嫌っている、裏ドラ頼みの三連車券である。25点で、締めて2,500円。

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 ジャンで、後ろにけん制されていた佐々木が発進。河合ともども、ホームで無事に出切る。あー、これは外れたなと思って眺めていると、前々から三番手に納まった秋永(共之、A級3班、静岡68期)が、直線河合を喰ってくれた。配当は2,100円、ガミだけれど、途中で外れたもんだと諦めたから妙に嬉しい。運が向いてきた気がする。これ以上いたらそれこそ変な車券を買いかねないので、軍資金−400円、残9,800円で撤収した。

 

 別府競輪場の最寄り、亀川駅近くの民宿に泊まる。まだ早いので、中心街の様子を見ようと、電車で別府駅まで出向いた。やはり、飲み屋、スナック街に人通りは少なく、閑散としている。道後温泉のアーケードは土産物屋が多かったが、別府の中心街は純然たる歓楽街。余計に寂しさが募る。

 居酒屋という気分でもなく、ぶらぶら散策したあと駅へ戻ろうとすると、いい感じの町中華みたいな店構えの、冷麺屋が目に入った。別府の冷麺は、白い盛岡冷麺とは趣が異なると聞いている。興味を惹かれ店内に入ってみると、夜の7時すぎ、カウンターに客の姿はなく。代わりに、接客担当のおばちゃんが疲れた様子で頬杖をついて、スマートフォンをいじっていた。

 こちらは別府冷麺屋としては老舗に属し、壁には地元新聞紙で取り上げられた際の記事なども見える。応援しなければ感じ、瓶ビールと餃子をお願いした。それをゆっくりやってから、最後に締めの冷麺をいただく。注文を受けてから製麺機でつくる太めの灰色麺は心地よく、ダシの濃いスープが美味かった。

 けれども、私が会計を済ませるまで、ほかに客は一人も入ってこなかった。

 

※ 【十九、二十場目】小倉競輪場、広島競輪場 - 競輪の結果をまとめるところ に続きます。

 

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空いているサンライズをとったら、2階建てのシングル・ツインだった。瀬戸大橋からの朝日がよろしい。(2021.2.19-20)

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道後温泉アーケード(2021.2.20)

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改修工事中の道後温泉本館。以前はずらりと行列ができていた(2021.2.20)

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一部ネットで有名な、道後ヘルスビル。コロナ不況を反映してか、看板数が減っている気がする。(2021.2.20)

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展示されている坊ちゃん列車(2021.2.20)

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伊予鉄松山市駅(2021.2.20)

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松島市駅前・紀の国屋の日替わり定食(2021.2.20)

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松山城(2021.2.20)

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(2018.2.11)

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松山競輪場は施設がきれい。(2021.2.20)

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(2018.2.11)

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在りし日のフードコート、悪い意味できれいなフードコートだった(2018.2.11)

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コロナでほかの店が全滅後も、1店だけ頑張っていた。手作り感のある親子丼は好印象。(2021.2.20)

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(2021.2.20)

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「普通」の札がかかっている(2021.2.21)

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八幡浜フェリーターミナル(2021.2.21)

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壁のようにそびえ立つ、険しい佐田岬半島(2021.2.21) 

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八幡浜のどーや市場はなかなかすごい(2021.2.21)

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(2016.9.4)

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別府港(2021.2.21)

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(2021.2.21)

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f:id:glay222:20210221181807j:plain別府競輪場(2021.2.21)

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(2016.9.4)

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食堂の肉うどん。おばちゃんはとても感じのよい人だった(20212.21)

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(2016.9.4)

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競輪温泉(2021.2.21)

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(2016.9.4)

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別府駅前(2021.2.21)

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(2021.2.21)

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(2021.2.22)

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別府競輪至近の市営浴場「浜田温泉」は朝からやっている。同じ市営同士ということもあり、駐車場には競輪の出走表が。(2021.2.22)