競輪の結果をまとめるところ

レース番号レース種別 半周ラップ(一周ラップ) 1着決まり手 2着決まり手 3着決まり手 J選手着 H選手着 B選手着(上がり) 自分が使うときにまとめる。なんの責任もとりません。

新生千葉競輪場・PIST6初開催を迎えて備忘録

 まだ、2日目のナイトセッションが残っている段階ではあるのだが、今日は一応、凱旋門賞までは起きているつもりで。秋の夜長に任せて、いよいよ始まったこの新生250m競輪・PIST6について、適当に書き連ねていくことにしよう。なお、以下の記述はすべて、法令や報道等の公知情報に基づいていおり、現時点での情報を整理し書き留めておくことが主目的となる。

 

 このPIST6では、施行権者である千葉市から、JPF(旧・日本写真判定(株))が運営にかかる包括業務委託契約を受けている。早い話が丸投げだ。これまでは、民間委託場であっても、競走の運営にかかる業務は、かつて地区ごとにあった競技会を旧・日本自転車振興会と統合吸収したJKAが担っていた。このPIST6では、自転車競技法上の競技実施法人(競走の実務を担う者)として、JPFの社長が代表を務める(一財)日本サイクルスポーツ振興会が指定されている。JKAは、競技を担う審判員や自転車、出走選手の登録や競走ルールの作成といった、競輪振興法人としての法定業務を実施する他は関わらない。現在のPIST6開催では、JPFの職員等が開催要員として動員されているようである。そして広報・企画業務は、JPFとmixiの共同出資による(株)PIST6が、車券発売業務はmixi完全子会社の(株)TIPSTARが、JPFからの再委託を受けている。

 まず、誰しも思うだろうから先に触れておくが、実況の拙さや枠帽色の致命的なわかりにくさ、競走中のカメラワーク等、ごく基本的なオペレーションのクオリティに難がある。新しいことをはじめる以上、JPF内の競技選手や千葉支部の選手を使って予行開催を何度も実施したものと思っていたが、どうにもお粗末なものである。紙の車券がないので実況の言い間違いも致命的ではないのだが、表に出ている部分だけでこの調子、検車や審判、着順確定ーーまあ、これは本業かーーといった、公営競技の正確性・公正性に関わる裏方部分が大丈夫なのかと心配になる。

 

 正直、最初に出された料理がこれなので失望した面は否めない。だが、経験不足からする失敗や想定が至らなかった点は、都度改善していけばよい。極初期に大アクシデントをやらかさない限り、だんだんと落ち着いていくのだろう。女性ダンサーが踊りミラーボールがキラキラ光る演出は、個人的には不要だけれどああいうのが好きなオッサンバブル世代も多かろうから、お好きなように。

 個人的には、並び順抽選後、選手がのろのろ並び終わって初めて判る流れは、爽快感に欠けるように思う。有力選手の番手になれば、横の動きがないPIST6では相当劣る選手でもしがみついてなんとかなる。競走の展開・結果に大きな影響があるのだから、ガッツリ演出して知らせてほしい。mixiからスマホゲーのガチャ演出担当でも呼んで、思いっきり焦らすようにしてもおもろいはずだ。

 また、単純な算数の問題として、ある選手Aが特定の選手Bの後ろとなる並びは、120分の24、20%の確率で発生する。連勝系の車券を検討する上では、従来の競輪では地区別ラインを念頭に予想するのと同様に、この数字を踏まえてオッズを吟味することになりそうだ。

 

 で、問題は、総建設費80億円が投じられたというこの新生・千葉競輪場に、持続可能性があるかどうかだ。後ほど触れるアホみたいな還元狙いぶち込みを除けば、1Rあたりの売得金額は200〜300万円である。先々の広報・拡販効果はあるにせよ、12レース制で3,000〜5,000万円程度の売上で当面はやりくりしなくてはならない。では、ランニング費用として、いったいどれくらいが必要なのだろうか。ここで包括業務委託の受託者であるJPFを主体として、項目別に見てみよう。

 

(1)選手賞典費

 当たり前だが、選手が走らなければ盆が敷けない。2日制4走、S・A混合の36人全国斡旋、優勝賞金が120万円ほどとされる。既存の競輪でもっとも近いのは4日制S級7車立て7Rで、優勝賞金が135万1千円、誘導を含めた賞金総額が29,939,000円。ただ、PIST6は「3着までしか賞金がでない」という話もあった。4〜7着・誘導員の賞金はおおむね競走の総賞金の4割程度であり、また1名選手も少ない。おそらく、半分から4割程度、1,300〜1,400万円を見ておけば大外れはないのではないか。

 そのほか、2日で24R6人述べ144人に出走手当日当で2万5千円そこそこだったはずで、およそ350万円ほど。参加旅費は1人あたりに均せば10,000円もいかないだろうから、35万円。

 これらをすべて足すと、1,700〜1,800万円もあれば選手への払いには足りるだろう。

 

(2)千葉市への地代・租税・繰出金

 旧千葉競輪場時代は国有地であった土地を、今回の新ドーム建設にあたって千葉市が取得。JPFへ32年9ヶ月の定期借地権で貸与した。千葉市の議事録を漁ると、借料は月額481万円とのこと。

 なお、同資料ではそのほか固定資産税・都市計画税で8,000万円ほどが千葉市の歳入となると計算している。また、JPFと千葉市との包括委託契約は最低でも1,750万円は市に拠出する。

 なので、1週間2日開催で、300万円強は積み立てておかなれけば算盤があわない。

 

(3)JKA交付金

 自転車競技法上の立て付けで行われるものである以上、競輪振興法人であるJKAへの交付金納付義務は避けられない。正確には、赤字の主催者は公益事業にあてられる分の交付金を免除されるが、上述のとおり千葉市は絶対に繰出金を受け取る契約になっている。たとえ委託をうけ実際に競輪事業を執り行っているJPFがどれだけ大赤字であろうと、千葉市が競輪からの収益金を使える以上、主催自治体以外で汎く社会貢献のため使用されるJKA交付金が免除されることはないだろう。

 JKAの交付金は計算方法・使途が異なる1号交付金(自転車・機械振興補助)、2号交付金(体育事業他公益補助)、3号交付金(競輪業務)とあり、本当に売上が少ない場合(1開催あたり3,000万円以下!)は3号交付金の最低割合、売得金額の0.15%で済む。1開催は8日以内で定められるので、PIST6の場合は4週分使うこともできるが、開催の金額が増えれば増えるほど率も上がる(15億円以上で約2.2%)ので、適当な節に分割する。とはいえ、一主催者の年度あたり開催数は24回までなので、100日間の開催を予定しているPIST6の場合は、一開催あたり4日で実施されるのだろう。

 

(4)開催にかかる業務委託費

 身内のようなものとはいえ、日本サイクルスポーツ振興会やPIST6への委託費はいかほどのものか。正直言ってここはわからない。

 もっとも興味深いのはTIPSTARへの車券発売業務委託手数料で、通常民間ポータルサイトへ委託した場合の手数料は10%前後とされている。現時点では単独独占発売であり、mixi資本なので半分くらいの可能性はあるが……

 mixiは株主向けのIR資料で、TIPSTAR・チャリロトや玉野競輪のような競輪事業、千葉ジェッツnetkeiba.com・netkeirin.comを含んだスポーツ部門の売上を百億円規模で増加させることを掲げている。先日は、JリーグチームのFC東京への経営参画を発表し、コンテンツの有効活用を狙ってかスポーツバー運営のHUBにも出資を行っている。ソーシャルゲームで溜め込んだキャッシュで社運を賭けて取り組んでいるセクターではあるが、上場営利企業である以上、メチャクチャなディスカウントはどうだろうか。

 

(5)新ドームの建設費用

 どういう貸借になっているのかわからんので、ひとまず知らん。

 単純に80億円を40年かけて償却すると、損益上は年間2億円の減価償却費が発生する。

 

(6)その他人件費、光熱水料等

 これもよくわかりませんね。JPFの社長の役員報酬っていくらぐらいなんでしょう。

 

 まあ、当然公知情報だけでは限りがあるのだけれど、ざっくり2日で4,000万円くらいの実入りがないと成り立たない気がする。25%のテラ銭からJKA交付金・TIPSTARへの手数料が6〜7%と想定すると、2日の売上は2億円そこそこ、1日あたり1億円。なんかそれっぽい数字にまとまってしまった。1席昼・夜別2,000円というプロ野球Jリーグより高い入場料収入がどうなるかはわからないがーーそれに、2,000席ぜんぶ埋まったって2日4セッションで1,600万円だーー、今の真水の売上からは、3倍ほどになるよう動いていく必要がある。

 

 で、今のところ身も蓋もなく強いのが、チャージ・投票に寄るバック・キャンペーンだ。昨日の額面上の売上は3.5億円、だがこれはTIPSTAR側の強烈な還元策による。5万円以上のチャージで10%還元、さらにPIST6競走であれば単勝・ワイド含め投票学の9%還元。無論これはTIPSTAR側がかぶるほか、元返し時の業務委託手数料の取り扱い次第では、JPF側も無傷では済まない。

 公営競技界では大昔、地方競馬オッズパーク楽天競馬が発足した当初、ポイントバック戦争が勃発。複勝で10%以上が還元されるという条件に大口投票が相次ぎ、最盛期にはしょうもない下級条件戦に数千万円が打ち込まれていた。しかも、元返しであっても当時の主催者は額面あたり10数%の手数料を支払う契約になっていたから、一時は真面目に競馬場の存廃に関わるんじゃないかと言われたものだ。

 結局、すぐに単複が対象外になってしまい。当時まだ未成年でネット投票が使えなかった私は、お祭りを前に指を咥えて見ているしかなかった。それでは、今回のTIPSTARに乗るかというと、まあこういうのは趣味じゃないなと。適当に逆張りを打って遊んでいたらーー競輪での成績が公式で出ておらず、タイムだけで買う素晴らしいお方がいらっしゃるので、私のような競輪ギャンブル依存症おっさんにはとても、とってもオッズがよろしいーー、二日目からは単勝・ワイドが投票バック対象から外れた。発売開始後のお昼前、すでにいくつかの鉄板競走のワイドに数百万円が入っているのに突如の変更は正直いって不信感しかないが、10%のチャージバックはそのままなのでぶち込みは続いている。6Rの雨谷の単勝は、2分毎に更新するごとに投票数が4,000万、6,000万、1億円、、、と吹き上げて、最終的には1億7,000万円が雨谷の単勝に投じられた。雨谷以外への逆張りも1,000万円ほどは売れていたが、TIPSTARはチャージバックで1,700万円払っている計算である。JPF・TIPSTAR全体で考えると、数百万円の損失は免れない。

 

 ま、米国10年債でさえ金利が1%そこそこのご時世、リスクを加味しても1割・2割を抜けるならと千万単位のカネを用意し実行したプロ大口客は、然るべきようになるだけなので好きにすればよいと思う。ただ、根本的な問題は、

 (1)現状の斡旋では、初日は実力差が大きく1着絡み的中帯オッズが著しく低い 

 (2)並びがランダム抽選、選手の技術介入の余地が大幅に制限されており、連勝系は予想しづらい

 ということで、つまりPIST6に対する正常な立ち回りとして、今後も客はまとまった金額を単勝やワイドに投じる可能性がある。実際、現在のところ3連単の売上は有意に伸び悩んでいる。JPFやTIPSTAR側も、安直に売上増を図るため、その方向に顧客を誘導する可能性があり、今回のボーナス付与入金単位が5万円からというのも絶妙だ。よほど生活に困っていなければ出せないことはない金額だが、一発で5万円が消失したらそこそこの打撃がある大きさである。限度額がそれほどないクレジットカードでも、なんとか入金できてしまう。ここまでの大判振る舞いは止めるにせよ、じつは今後も還元策は続いていくのではないだろうか。

 だが、IR絡みでギャンブル依存症が世に問題視されてから久しく、この2日でも1,000万円以上が突っ込まれたワイドが外れた事例もあった。数百万円を損した、そこまでいかなくても数十万、数万円と、その人それぞれの大金を投じていた可能性は高い。

 一般論として、オッズが低いゲームほど、単位あたりの金額が上がりやすく、生活が破綻するような領域まで踏み込んでしまいやすいーー1.5倍を100円買ってどうなるんだ、って話ーー。また、パチンコにしろカジノ・チップにしろ、「お金を使っている感覚が薄れる」ようにするというのも常道で、ピカピカショービジネス興行のようでその実はスマートホンからポチポチっのパリミュチュエル方式の賭博による収益化モデル、というのは構造として危うさがある。

 PIST6と従来競輪の差別化、目玉のひとつとして導入された単勝だが、商品の方に手を入れないままこれに頼って売上増を目指すと、かえって世間を騒がせる原因になってはしまわないか。早急に、せめてS・A混合の取りやめ、PIST6独自級班制による競走内の選手力量調整が、必要なように思うのだが。