競輪の結果をまとめるところ

レース番号レース種別 半周ラップ(一周ラップ) 1着決まり手 2着決まり手 3着決まり手 J選手着 H選手着 B選手着(上がり) 自分が使うときにまとめる。なんの責任もとりません。

【二十五場目】京都向日町競輪場

 アラフィフ男のスリーピース・ロックバンドを観るために、12月の大阪に行く。ライブは難波のzeppで夕方から、珍しく新幹線など使ったので、昼過ぎには新大阪に着いた。ひとまず淀川を渡り、大阪駅から環状線へ。時間潰しに、新今宮に行くことにする。

 

 「あいりん」に来たのは、2018年の夏以来のこと。あの時は、まだ動いていた大垣夜行ムーンライトながら」から関西方面へ乗り継いだのち、朝の銭湯を貰いに降りた。駅前にあるあいりん労働福祉センター・通称「センター」の威容と、未だ現役の空気に唸り。治安が悪いと聞く街だが、適当にgoogle mapであたりを付けた、ドヤが経営する「入船温泉」は、拍子抜けするほどよい銭湯だった。明るく、掃除が行き届いており、湯が熱い。冷房をガンガン効かせた脱衣所では、電光掲示板が週間天気予報を映していた。すべてが、あいりんで働く人のためを思ってしつらえられているのだなと、感心した記憶がある。

 

 さて、今日の人通りを、そこら中にインバウンド客がいた当時と比べてはいけない。以前は更地だった場所には、コロナであてが外れただろう「星野リゾート」の都市型ホテルができた。駅前の「センター」では、建て替えのため3年前に閉鎖されるところ、この地に根付く労働運動家が蜂起。これを占拠するという事件が起きた。すったもんだがあった末に、機動隊まで出動し占拠者を排除したが、その後もセンターのシャッターの周りには、当時バリケードにされた大量のごみが積みあがり、日々不法投棄でその量を増している。あいりん(釜ヶ崎)を舞台にした2018年の映画「月夜釜合戦」に拠り、占拠当時に運動のシンボルとして置かれた人間が入れるような巨大釜も、仮設トイレの隣に放置である。

 「センター」の求人機能それ自体は、道を挟んだ高架下の仮設施設に移転している。いずれ建物の解体が始まり、労働者の高齢化が叫ばれるこの街も、目に見える大きな一区切り、変化の時を迎えるのだろう。入船温泉も、昨年になってサウナにロウリュを備えるなど、施設を全面リニューアルした。脱衣所で天気予報はもう流れないかもしれないが、大阪のどこに出しても恥ずかしくない、立派な現代銭湯だ。

 

 youtubeで知った周囲の飲食店、開業100年という南自由軒に、あいりんにあって客単価1,000円の上等な仕事をするレストラン・富士屋を覗いたあと、いったん日本橋に取った宿へ。そこから、噂に聞くほど寂れてもいない黒門市場から電気街を通って、ライブ会場へと向かう。珍しく入場番号が早かったので、前列ポール際に陣取ってみた。周囲は私のように30代~40代が客のメインだが、意外にも、目をキラキラさせた若い層もいる。客の新規流入は大事なことだ。

 1年ぶりに聴くおっさん3人の安定感は上々、若いころよりもずっと巧くなっている。ただ、21年前にインディーで出した曲をやるのに、ギター・ボーカルが勢い余ってマイクを倒し、そのまま自分もずっこけたのは、笑えた。

 

 翌朝、京都方面への鉄道を行く。淡路駅で時間があったので降りてみると、JR駅に向かうアーケードには、老舗然とした個人経営の喫茶店が、すでに客を入れている。長年きちんと磨かれ、落ち着いた店内でモーニングをシバくのも悪くないなぁ……というのを我慢して、阪急の各駅停車でゆっくりと。西向日駅で降り、20分ほど歩けば、京都向日町競輪場に着く。

 

 西宮、甲子園がとうに潰れ、今や大阪の競輪ファンから最も近いのが、この向日町競輪場となる。だが、ここは私的に「日本三大廃墟競輪場」に数えているほど、施設がボロい。古いだけなら、まだ運営側のやりようで面白い場になり得る。小田原や広島はその類だし、向日町には村上兄弟のような大型選手が何人もいたのだから、売り出し方は色々あったはずなのだが。すっかり色褪せたマスコット――ムコリンムッチー――のイラストをそのまま放置していたり、塗装が剥がれた建物に錆が目立ったりと、運営のやる気が見えないのが難だ。

 長らく廃止の話も出ており、可能な限り経費を削減するように、いらぬことはせぬように、という京都府からの方針で、ここまでやってきたのだろう。入場者数の低迷から、記念開催以外は特別観覧席も閉めるようになってしまった。

 京都をホームとした競輪黎明期のレジェンドに、歴代1位・通算1,341勝のアンタッチャブル・レコードを誇る松本勝明選手がいる。昭和40年、彼が1,000勝を達成した記念に、植えられた桜が場内にあった。だが、その桜はすでに伐採済みであり、ただ「記念桜」を示す看板だけが残っている。ソメイヨシノは強い樹ではないから、なくなることはやむを得ないとして、看板は撤去するなり、往時の姿を写真で掲示するなりすればよいところ、ただ草に埋もれる切り株だけを残している。何がしたいのか分からない。

 

 本日は、ガールズ込みのヒラ開催初日。相変わらず殺風景なスタンドが寒く、7車で予選勝ち上がり4着権利の中段取り合いは興ざめである。須田鷹雄氏が記事にしたことで全国区となった「ホルモンうどん」を筆頭に、生き残っている食堂は悪くないし、コーヒー・スタンドが頑張っているのも、独特の味があるのだけれど。おっと、落車で6番車がアタマ、25万車券が飛び出した。この第8競走までで打ち切り、競輪場を出る。

 JRの向日町駅まで歩き、そのまま京都駅を飛び越して。山科からトンネルに入り、大津へ。明日も向日町に行くつもりなので、本日はここに投宿する。まだ明るいうちに、琵琶湖畔に出て、ボートレース場の前からさらに北へ進む。まだ真新しい、ショッピングモールへと至る。

 

 ここは、京都近郊としては向日町と並びながら、10年以上前に廃止された、大津びわこ競輪場の跡地である。余裕のある敷地を再開発し、「ブランチ大津京」と名付けられたこの商業複合施設には、子供が遊べるような公園が併設されている。土曜日だったこの日も、家族連れが多く集まっていた。事前に分かってはいたが、競輪場の痕跡など何も見当たらない。今ここにいる人々にとっては、ここがかつて競輪の東西対抗頂上決戦、高松宮杯記念競輪の会場であったことなど、思いもよらぬに違いない。

 

 さて、ミッドナイト開催で経営が一息つき、京都向日町競輪場にも、ようやく中長期的な存続が決まった。当然、施設再整備の構想も持ち上がっているようである。関西圏でも最も立地に恵まれながらも、止まったままだったこの競輪場が、いよいよ動く。

 何事も、変わっていくのであれば、その先は楽しみであって欲しいものだね。

入場門(2019.8.22)

(2022.12.3)

(2022.12.4)

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スタンド1階。冷暖房が効いているので、基本はここにいる(2022.12.3)

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迫り出した審判室も味わい深いが、耐震性とか大丈夫なのだろうか(2022.12.3)

バックに見える時計のついた建物は向日市役所だが、主催はあくまで京都府営(2022.12.3)

3・4角の新しいスタンドが特観。ほぼ使われなくなってしまった(2017.3.17)

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関西圏の専門紙は安かったが、ついに500円へ。売り場のおばちゃんに「ごめんなさいねぇ」と謝られてしまった(2022.12.3)

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(2019.8.22)

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こちらのラーメンは、京都風のこってりだった(2022.12.3)

関西はうどんが美味い(2022.12.4)

ホルモンうどんの吊看板に「向日町・奈良・びわこ店」とある(2022.12.3)

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ホルモンうどん。正直、味は奈良の方が……(2017.3.17)

大津びわこ競輪場跡地(2022.12.3)

(2022.12.3)

個人的にウォッチしている、バーチャルドヤ街暮らしお姉さん Vtuber 日雇 礼子さん https://twitter.com/hiyatoireiko

某ホルモン屋とか、あいりんの店を取りあげるアカウントは多いが、初期にはドヤ住まいをしていた「原住民」なので解像度が高い。さすがに、カメラ向けるのは憚られる土地柄でもあり、以下の3動画は個人的に「センター3部作」と呼び、資料的価値が高いので張っておく。

www.youtube.com

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